前置き
普通パンといえば中身が白いパンを想像されると思いますが、ドイツやロシアでは黒パンのことだそうです。古いネタですが、アルプスの少女ハイジがチーズをたっぷりつけて食べていたパンは黒パンになります。これは材料の違いで、
- 白パン ・・・ 小麦
- 黒パン ・・・ ライ麦
となります。日本でもライ麦配合のパンはスーパーでも販売されていますが、これは黒パンとは違うかも。アマゾンさんで買える下記のようなものが黒パンです。
黒パンにもいろいろありますが、今回はボロジンスキー(英語:Borodinsky Bread、ロシア語:Бородинский хлеб)の作り方を紹介します。ボロジンスキーはロシアでは有名なパンですが、日本ではほぼ入手不可ですし、作っているところもありません。私も本物を食べたことがありませんのでこれでいいのかどうかわかりませんが、興味を持っていただいたり、実際に作るのをチャレンジしていただければ幸いです。
さてそもそもなぜボロジンスキーなのかということですが、嫁が小さいころにお土産にもらった黒いパンが食べたいと言ったのが始まりで、「もそもそして湿っててすっぱくて最初まずいかと思ったけど癖になる味」とのこと。最初はドイツの黒パンを作ってみたのですが、「よく似ているけどもっと甘い」という評価でした。その後いろいろあってボロジンスキーにたどり付きました。もっともこれでもお土産のパンとは少し違ったようですが、まあこれでもいいじゃんと落ち着いた次第です。
レシピについてですが、日本のページで見つかるレシピは〇〇風レシピとかはあるんですが、やっぱり本物に近いものを作りたいということで、ロシア語のページを検索しました。google先生の翻訳を駆使し、ロシア語のレシピを日本語に変換してやっとこれだと思うものを見つけました。機械翻訳ですので変な日本語になるわけですが、そこでよくわからない材料がありました。
- 赤発酵ライ麦麦芽
- 65トンの水
一つ目の赤発酵ライ麦芽は、ロシアの通販サイトなどで普通に売っているので、どっかで売っているだろうと高をくくっていましたが、日本ではそれらしいものは全然ありませんでした。個人輸入も考えたのですがハードルが高そうであきらめました。二つ目の65トンの水。翻訳ミスだろうと想像はつきますが、さっぱり意味がわかりません。いろいろなサイトを見て回り、「麦の発酵は65℃で一番活性化する」「大麦のダークモルトは蒸し焼きをすることで発酵とカラメル化を同時に行う」という二つの情報をもとに、下記ではないかと推測しました。
- 赤発酵ライ麦麦芽 ・・・ ライ麦のダークモルト
- 65トンの水 ・・・ 65℃の水
ライ麦ダークモルトの作り方
- ライ麦粒を発芽・・・発芽玄米と同じ要領です。私の場合、ぬるま湯に一日つけたあと水切りし、2~3日放置で2cmほど目が出ました
- 発芽ライ麦の糖化・・・タニカヨーグルトメーカーを使い、65℃で2時間恒温する
- 糖化したライ麦をカラメル化・・・180℃で1時間強ぐらいオーブンで焼く。平らに広げて時折混ぜる
1で酵素を活性化し、2で酵素の力によりでんぷんを糖化させます。3は時折味見してください。ポリポリして甘くて苦くて香ばしい感じになればいいと思います。2と3はプロの方は窯で蒸し焼きにして同時に行うようですが、そんなの無理ですので糖化とカラメル化を別工程に分けました。
サワー種の作り方
ライ麦パン作りに欠かせないのがサワー種です。サワー種は乳酸菌が入っていますので酸味があり、ライ麦パンを焼くのに必須の材料です。小麦とライ麦の酵素の働きを比較してみると下記になります。
- 小麦パン でんぷんが固まる温度<酵素の活動温度
- ライ麦パン 酵素の活動温度<でんぷんが固まる温度
オーブンで焼成する際、小麦の場合、酵素が活動する前にでんぷんが固まるのですが、ライ麦の場合、でんぷんが固まる前に酵素の活動が活発になり、酵素がでんぷんを分解してしまうため、べちょべちょした残念な結果になってしまうのです。この酵素の活動は酸性にすることにより抑えられるため、サワー種が必要となるわけです。酸性にしてしまえばいいのでレモン汁や酢でも代用できます。ライ麦パンのレシピでホエーがよくつかわれているのは酸性にするためだと思われます。
サワー種の作り方
- 水50g、ライ麦粉50gをよく混ぜる
- 1日放置
- 水50g、ライ麦粉50gを追加し、よく混ぜる
- 1日放置
- 4の半分(100g)に水50g、ライ麦粉50gを追加し、よく混ぜる (残りは捨ててください。冷凍して次の種として使えるようですが、やったことないです)
- 1日放置
- 完成 すっぱいにおいがして泡がぶくぶくしている
混ぜる工程で、空気中に存在する天然酵母と乳酸菌を取り込み、水とライ麦を追加していくことでどんどん酵母と乳酸菌を元気にさせていくわけですが、失敗すると腐敗してしまうこともあるようです。私の場合安定して成功させるため、最初にこだま酵母少々とラブレ(生きた植物性乳酸菌)を少し混ぜ、1日放置の工程では、ヨーグルトメーカーを使って24時間25℃に保つようにしています。
にしてもこのヨーグルトメーカーの25℃~65℃で48時間まで設定可能ってすごいらしいです。性能がいいので大学の研究室でも使われているとか・・・
発酵前 | 発酵後 |
ボロジンスキーの作り方
分量は食パン2斤型2つ分です。
- A
- ライ麦粉 ・・・ 300g
- ぬるま湯 ・・・380g
- サワー種 ・・・ 100g
- B
- ライ麦粉 ・・・ 100g
- ライ麦ダークモルト ・・・ 50g
- 熱湯 ・・・ 400g
- コリアンダー 5g
- C
- ライ麦粉 ・・・ 350g
- 中または強力粉 ・・・ 130g
- 水 ・・・ 150g
- モラセス(廃糖のこと、糖蜜でも可) ・・・ 40g
- 砂糖 ・・・ 56g
- 塩 ・・・ 10g
- その他
- 片栗粉少々
- コリアンダーシード
- バター(ラードのほうが本格的)
A、水を煮沸させた後ぬるま湯程度にさまし、ほかの材料と混ぜ合わせ1日放置。
発酵前 | 発酵後 |
B、ライ麦ダークモルト、コリアンダーをミルミキサーで粉末にし、ライ麦粉と熱湯とよくなじむまでかき混ぜ、ヨーグルトメーカーで65℃2時間発酵させます。
ロシアのレシピサイトでは、熱湯でこねた後、魔法瓶にいれて1日放置とありました。この工程内で「魔法瓶で保温することにより65℃で発酵するよ」って説明があり、これが65トンに誤訳されていました・・・
コリアンダーシードとライ麦ダークモルト | ミキサー後、ライ麦粉と混ぜ合わせる |
熱湯でこねた | 発酵後、色が濃くなります。 |
C、A,B,Cをすべて混ぜ合わせる。
我が家はキッチンエイドKSM7WHを購入しました。速度2で10分3分ぐらい混ぜます。まんべんなく混ざればいいです。ライ麦パンは混ぜすぎるとよくないらしいです。
ボロジンスキーの焼き方
パン型1個につき角砂糖1個分ぐらいのバターを型の内側に塗ります。生地が非常に焦げやすいので、やっとかないと型から外れなくなります。
型に生地を入れ、水で溶いた片栗粉(水:片栗粉は半々ぐらい)を料理用の刷毛で生地に塗り、表面を滑らかにします。その後表面にコリアンダーシードをまぶします。少し押し付けたほうがよくくっつきます。
1.7倍程度の大きさになるまで発酵させます。気温にもよるのですが、2~5時間かかります(こだま酵母を使えば2時間程度ですが、天然酵母は5時間ぐらいかかったことがあります)。表面が丸みがあるのが好ましいので、下記の写真は発酵させすぎです。
オーブンを230℃に予熱し、1時間焼成します。5分毎に10℃さげ、180℃まで徐々に下げます。200℃に予熱し、180℃で70分焼成します。じっくり焼いたほうがうまく膨らむようです。
焼けました!焼きたてはパン内部の水分が多いため、すぐに食べたいところですが1日は放置させ、水分を飛ばしてください。
カットしてみました。発酵させすぎで少し天井がへこんでます。ちょうどいい発酵だと膨らんで仕上がります。
そのまま食べてもおいしいですが、トースターで焼くと香ばしくなります。またクリームチーズを塗ったり、酸味があるおかずとよく合います。
ロシアやウクライナではサーロ(豚の脂身の塩漬け)をのせてウォッカのつまみにしたりするようです。
ライ麦パンが大好きで、初めてのボロジンスキーをこちらのレシピをもとに挑戦してみました。ライ麦の発芽からサワー種作りなど新しい体験が満載でしたが、このレシピがあったからこそ作ることができました。ぜひこれからもボロジンスキー作りに邁進したいと思います。ありがとうございました。
お役に立ててうれしいです!
よき黒パンライフを!!
最近パン作りにはまり、黒パンが恋しくて挑戦しました。このレシピを読んで頭がクラクラしましたが食い意地で挑戦。1回目は我慢して食べ2回目は美味しいと思い、3回目で友人へプレゼントして喜ばれました。
ありがとうございました。
はじめは小麦のとれないところの人たちに同情しましたが、今は羨ましいです。
コメントありがとうございます!気が付くのが遅くなり申し訳ありません。
この記事が参考になったということでとても嬉しく思います!