人工知能ブームが胡散臭く感じたので脳や意識について勉強してみました

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まえおき

オーブンレンジにまで人工知能が搭載される今日この頃1 、皆様お元気ですか?

Google DeepMindが開発したAlphaGoというコンピュータ囲碁プログラムがプロ棋士を破って世界を驚かせたのは2015年10月です。

それまでは、コンピュータがプロ棋士に勝つのは難しいと言われていました。その理由は場面のパターンの数の多さです。チェスが10の120乗、将棋が10の220乗に対し、囲碁は10の360乗のパターンがあるらしいです。つまり、最善の手を総当たりで計算するにはパターンが多すぎるというわけです。

その囲碁でコンピュータがプロ棋士を破ったのだから大変なことです。

『ムーアの法則』と言われるものがあります。おおざっぱに言うと、コンピュータの性能は1.5年で2倍になるというものです。では、DeepMindがコンピュータの性能を武器に、上で述べた10の360乗のパターンを総当たりで計算して最善の手を探し出したという事でしょうか。

いえ、そうではありません。詳細についてここでは述べませんが、AlphaGoは人間の脳の構造を参考にしたニューラルネットワークを使って最善手を探し出しています。つまり、アルゴリズムが勝利の決め手でした。

ただ、その辺のパソコンの性能でも今回の勝利を手にできるか、というとそうではなく、AlphaGoはCPUサーバ1202個、GPUサーバ176個というリソースを投入しているという事です。つまり勝利の秘訣は、コンピュータの性能の向上と素晴らしいアルゴリズムの相乗効果といったところでしょうか。

余談ですが、このリソースは一般の人でも利用できるGoogle Cloud Platformというクラウドサービスを使っているらしいです。つまりは真似しようと思えば出来ないこともない、という事です。ずいぶん良い時代になったものです。

・・・

AlphaGoの活躍のおかげか、最近は人工知能(AI)というキーワードがビジネスの世界を賑わせています。おそらく、大企業の上層部では毎日のように人工知能の話題が上がり、頻繁に怪しいコンサルタントや商魂たくましいITサービス会社が出入りしているのではないでしょうか。

私はこんな状況について「胡散臭いなぁ」と思っていました。何故かというと、ニューラルネットワークの研究は1940年代頃から行われているようですし、1980年代には実用的なエキスパートシステムというものが登場しているようですし、保険業界で導入されようとしている人工知能は「それってルールエンジンじゃね?」と思ったりします。

そんな風に考え、悶々としている中で見たTakayuki Fukatsuさんの次のツイートに、妙に共感したりもしました。

数年前から言われるようになった『ビッグデータ』という言葉とよく似た雰囲気を感じます。

「ビッグデータ分析で分かった画期的な事実!」とかいうものの大半は「それって統計学で良くね?全データを対象にしなくてもサンプリングすれば良くね?」とか思うわけです。

そうこうしているうちに「Excelでビッグデータ分析」とか言い出す始末で、出版ラッシュです。

はじめよう Excelでビッグデータ分析 ビッグデータ分析 Excel新機能で簡単に! ビッグデータにも挑戦! Excelではじめるビジネスデータ分析 (SCC Books 383)

ビッグデータの定義っていったい・・・

ビッグデータとは単なるバズワードなのか。そして人工知能やAIという言葉もバズワードに過ぎないのか。

(なかなか前置きから抜け出せません)

今の人工知能の置かれる状況についてどうも納得感が無いのでいろいろと調べたところ、いくつか発見がありました。

まず、人工知能には『強いAI』と『弱いAI』の二つに分類される、という考え方があるようです。

強いAIは、SF映画に出てくるアンドロイドのような、人間と区別がつかない応答をするような人工知能です。人間と変わらない知能や自意識を持つものです。

弱いAIは、特定の問題を人間の代わりに解決してくれるものです。

この説明は私にとって凄くしっくりきました。どうも、世間では前者の『強いAI』を意識した宣伝文句が飛び交っているような気がしてならないのですが、実現しているのは『弱いAI』の方です。

弱いAIの立場は別にネガティブな事ではなく、今の技術で出来ることをコンピュータに代わりにやらせようという、すごく常識的で前向きな提案だと思います。

ただ、人工知能に学習させたら自分で考えて答えを教えてくれる、みたいな、弱いAIを強いAIに誤認させるような言い方はちょっとインチキくさいんじゃないかと思うのです。

そもそも『人工知能』という言葉の意味を考えるときに避けては通れないことがあります。それは『知能』とは何か、『意識』とは何か、という事です。これらを理解しない限りは、人工知能というものの正体を理解することはできないと考えました。そしてそれらをつかさどる人間の脳の働きについて知る必要がある、と私は考えました。

そこで私は次にあげる本を読むことにしました。

今回は、これらの本を読んだ感想などを軽く紹介しようと思った次第です。
(つまり、ここまでが前置きです)

本題

まず読んだのは次の本です。


これは知能とか意識とはあまり関係ありません。知能とか意識を学ぶ前に、体にあるセンサーと脳の電気回路的なしくみのようなものを知っておくのも悪くないかな、と思ったから読んだというのは後付けの理由で、たぶん本屋で見かけて面白そうだったので何となく買ったという感じだったかと思います。
この本の目次は次の通りです。

プロローグ.脳と感覚のしくみ
1.視覚のしくみ
2.聴覚のしくみ
3.嗅覚・味覚のしくみ
4.皮膚感覚のしくみ

色々な感覚がどのようなしくみで認識され、脳に届くかが図解付きで分かりやすく説明されています。

人工知能と全くの無関係かというと、コンピュータで扱うニューラルネットへの入力データの扱いに乱暴さを感じているので、人間の感覚のしくみを模したものを入力データとして扱う、などのアイデアが今後は必要になるんじゃないかなーと妄想したりしています。

次に読んだ本が、これです。


この本は「人間に意識がある状態の時の脳がどうなっているか」がわかる本です。私はこの本を読めば「人間の意識が脳のどのような仕組みによって実現しているのか」が分かるものだと思って期待していたのですが、残念ながらそうではありませんでした。

この本で分かることは、ザックリ言うと
・人間の意識は現在の科学では解き明かされていない
・人間の脳はモジュール化されている
・意識がある状態では、脳の各モジュールがバラバラに動作して一つの答えを出す
という事です。

読み始める前の期待値が大きかった分、少し物足りなさを感じたというのが本音ですが、それはこの本が悪いのではなく、現在の科学で分かっていることがここまでだ、という事に過ぎません。これに文句を言うのはただのクレーマーです。私にとってこの本は、次に紹介する本を読む前の予習としてちょうどよかったです。この本を読んだおかげで、次の本がすんなり読めました。


この本には圧倒的なスケールとボリュームを感じました。絶対的におススメできます。人間がどのように意思決定しているのかについて、かなり踏み込んだ内容が書かれています。信じられないような内容も多いのですが、臨床的に確認されているようですし、言われてみれば確かにそうだよな、と感じます。

その中でも一番の驚きは「左脳のインタープリター・モジュール」の存在です。私は、人間が生きていく上で最も大切なことは「考えること」だと思っています。余談ですが、IBMは「THINK(考えろ)」という言葉を会社のモットーとして掲げているらしいです。とても素晴らしいことだと思います。ちなみに私がThinkPad好きなのとは無関係です。

ただ、この「考える」という事が一筋縄ではいかないと気付かされたのが「左脳のインタープリター・モジュール」の存在です。私は「考えている」というのは「論理的に答えを出す」ことと認識していたのですが、実は自分が考えて出したと思った答えは「左脳のインタープリター・モジュール」が自動的に出している非論理的な答えかも知れないのです。なんてこったい!

この本をきっかけに「考える」事について再考させられました。考えた結果、大切なのは「客観的に認識して戦略的に思考する」事かな、と今のところ思っています。

…何のことやら、と思う方は〈わたし〉はどこにあるのか: ガザニガ脳科学講義を読めばわかってもらえるかも知れません。

私は2冊同時に買ったのですが、特に理由もなく「意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論」→「〈わたし〉はどこにあるのか: ガザニガ脳科学講義」の順に読みました。たぶん、この順に読むのが重要な気がします。逆順だと「〈わたし〉はどこにあるのか: ガザニガ脳科学講義」が少し難しく感じ、「意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論」が物足りなく感じる気がします。

この2冊を読んで、少なくとも人間の知能と現在の人工知能は全く別物であることが確信できました。ただ、現在研究されている人工知能は脳を構成するたくさんのモジュールのうちの一つと考えることができるのではないか、とも思いました。つまり、このまま人工知能の開発が進みたくさんのモジュールが生み出され、それを統合して一つの答えを出すようなプログラムができれば、それが意識を持った人工知能、強いAIなのかも知れません。

ちなみに、冒頭でビッグデータや人工知能は胡散臭いと言ってしまいましたが、それはあくまで現時点の話であり、未来は明るいと確信しています。

ビッグデータ界隈には現在、莫大な投資が行われています。現在は統計学の延長のような使われ方しかしておらず、あまり有効な使い方をしているとは思えませんが、例えば統計学では外れ値として除外されてしまうようなマイノリティーに対する分析に使えばとても有効じゃないかと思っています。また、ビッグデータを処理する技術は人工知能における機械学習やディープラーニングに繋がります。技術があっても市場が無いと発展しないものです。今は、人工知能においても市場ができて莫大なお金が動いています。すると市場競争が行われ、技術はますます発展します。経済的な好循環のもと、ビッグデータや人工知能の技術は市場原理に従い、否が応にも発展していくことでしょう。

それが、人工知能が暴走して人類を滅亡させる結果になろうとも・・・

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