IT企業と名乗れるか 第7回 ~企業と代表者~

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今回は、企業と代表者について考えている事を書き記します。

私の持論は記事の最後に「まとめ」としてコンパクトに記載しています。ただ、それだけ見るとチンプンカンプンだと思うので、まず「企業と代表者についての考え」という項でかなりながーく、「まとめ」の考えに至った思考の内容を書いています。お急ぎの方は「まとめ」だけをご覧ください。

企業と代表者についての考え

「企業」とは何でしょう。「企業」とは「法人」です。「法人」とは、生き物の人間以外で、法律によって「人」とされているものです。法律でいうところの「人」とは権利・義務の主体となることができる権利能力を認められた存在の事です。

株式会社や合同会社は「営利法人」に分類されます。営利法人とは、「社員権」を持つものに利益を配分することを目的とする法人の事です。「社員権」とは従業員のことではなく、株式会社の場合は株主であり、株主から任命された人間が会社を経営します。合同会社の場合の「社員権」は会社の役員が有します。

権利・義務の主体となることができる権利能力を認められた法人であるからこそ、企業は「企業の社会的責任(corporate social responsibility、略称:CSR)」を果たすことが求められます。企業の社会的責任とは、ステークホルダーに対する説明責任、企業統治、コンプライアンス、リスクマネージメント、内部統制、持続可能な社会の実現のための環境や労働問題への取り組み等があげられます。

…ダラダラと書いてしまいました。何が言いたいのかというと、法律が意図するところをしっかり認識しないと代表者とは言えないと私は思うのです。企業の代表者はこういった事を常に意識しながら会社を運営しなければいけないのです。そして、企業の社会的責任を果たすことを常に意識しなければなりません。

突然ですが、最近になってニュース等で「同一労働・同一賃金」というキーワードをチラホラ聞くようになってきました。これは、同じ仕事内容の場合は雇用形態(正社員、アルバイトなど)や性別、宗教、人種、国籍等によらず同じ賃金を払うべきという考え方です(日本では夢のような話ですね)。私の考えとしては「当然だ」と思います。これの実現が難しい理由は「悪貨は良貨を駆逐する」という事だと思います。
「同一労働・同一賃金」について、同一企業内では実現可能だと思いましたが、異なる企業や業種間の賃金格差については解消しないのではないかと思い、外国の例を調べてみました。するとスウェーデンでとられている「レーン=メイドナー・モデル」という経済政策ではその辺についても対処しているという事で、徹底しているな、と思いました。

少しだけ脱線して給与・賞与の査定について思っていることについて書きます。どうも査定において「将来性」を加味して決めるのが当たり前になっているように感じます(そうじゃないですか?)。これは、正しい考え方でしょうか。上に書いた「同一労働・同一賃金」と反するように思えます。私の考えは、同一の労働内容であれば、やっぱり同一の賃金でないとおかしいと思うのです。では、将来に期待できる従業員がいたとして、金銭的に評価してあげなくていいのでしょうか。これの答えとしては、将来的により良い賃金がもらえる仕事やポジションを用意する、が正解だと思うのです。それが社員にとっても企業にとってもメリットがあります。

…またダラダラと書いてしまいました。次に何が言いたいのかというと、企業は消費者(顧客)、従業員、株主、債権者、仕入先、得意先、地域社会、行政機関等のステークホルダーに対して「公平」でなければならないという事です。「平等」というと少しニュアンスが違う気がするので、「公平」と表現しています。

スウェーデンのモデルが仮に理想だとした場合、個々の企業の存在意義とは何なのでしょうか。…というのも、同じ仕事をしていたら同じ給料がもらえ、それは企業間や業種間でも格差が調整されるわけです。また、企業はコンプライアンスが求められ、法律で規定されている範囲でしか活動してはいけない訳です(この辺についても思う事は多々あります。例えば日本企業はコンプライアンス無視が多く、入社する企業の運・不運で人生が左右され過ぎだと思うのです)。企業活動とは本来、制約された狭い範囲の中でしか行えないものなのではないでしょうか。そうなってくると、どの企業に就職しても同じ賃金で、法律の制約も加わって、企業の個性は出しにくくなるのではないでしょうか。企業に個性が無くなるとした場合、様々な企業が存在する理由は何処にあるのでしょうか(中小企業の代表者である私が言うのも変な話ですが、同一業種の中小企業が乱立する事に合理性は無い、というのが今のところの考えです)。私は、企業としてどれだけ洗練されているか、といったことが試されているのだと思うのです。「練度」という表現がしっくりくる気がします。練度とは、企業の社会的責任をしっかり果たす体制を築き、ステークホルダーの利益を最大化するという事を如何にスムースに行えるか、という事だと考えいます。

まず、こういった事を行う上でもっとも効力を発揮するのがITだと思うのです。IT企業であるからには、練度の高い組織になれなければいけません。

練度を高くするという活動は、優秀な経営者が得意とするところなのだと思います。企業の練度を上げるというのは業種を超えて共通する価値です。よって、優秀な経営者は業種を超えて代表を務めることが可能です。事実、様々な業種の代表を務める方がいらっしゃいます。日本で言うと原田泳幸さんが有名でしょうか。
軽く経歴に触れると、次のような感じです(wikipedia-原田泳幸より)。
 1972年 – 日本NCR(株)入社
 1980年 – 横河ヒューレット・パッカード(株)入社
 1983年 – シュルンベルジェ・グループ入社 取締役マーケティング部長、取締役ATE事業部長
 1990年 – アップルコンピュータ・ジャパン(株)(当時)入社 マーケティング部長
 1993年 – 同社 ビジネスマーケット事業部長 兼 マーケティング本部長就任
 1994年 – 同社 取締役マーケティング本部長就任
 1996年 – 米国アップルコンピュータ社 ワールドワイドコンシューマーマーケティング/SOHO担当バイス・プレジデント就任(米国本社勤務)
 1997年 – アップルコンピュータ(株)代表取締役社長兼米国アップルコンピュータ社副社長就任
 2004年 – 日本マクドナルドホールディングス(株)、日本マクドナルド(株)取締役副会長兼社長兼最高経営責任者 (CEO) 就任
 2005年 – 同両社代表取締役会長就任、社長及びCEO兼任
 2013年 – ソニー(株)、(株)ベネッセホールディングス 社外取締役就任
 2013年 – 日本マクドナルド(株)の代表権及び社長兼CEOを退任し、代表権のない取締役会長に就任
 2014年 – 日本マクドナルドホールディングス(株)の代表権及び社長兼CEOを退任し、代表権のない取締役会長に就任
 2014年 – (株)ベネッセホールディングス代表取締役会長兼社長、及び国内教育カンパニー長就任(現職)
 2014年 – (株)ベネッセコーポレーション代表取締役社長就任(現職)
 2015年 – 日本マクドナルドホールディングス(株)、日本マクドナルド(株)取締役会長退任

素晴らしい経歴です。
そもそも組織とは原則として、属人化してはいけないものであると考えます。よって、それが代表者であっても優秀な方が務めるのが最適で、代表者が変わった事により組織が揺らぐようではいけないのです。

…本当にそうなのか?

少なくとも、創業したての企業と成熟した企業とでは代表者に求められるものが違うと私は考えます。成熟した企業と創業したての企業との一番の違いは何か?それは「企業文化」にあると私は考えます(「社風」と言っても良いかもしれません)。
成熟した企業では「企業文化」は既に育まれています。経営者が変わったところで企業文化はそう簡単に変わるものではないし、むしろ経営者はその文化を尊重しなければなりません。なぜならその企業の存在意義自体が企業文化にあると思うのです。外からその企業を認識するのは企業文化であり、従業員はその企業文化と共に働いており、良い製品が出来るのもその企業文化があるからこそ、だと思うのです。
一方、創業したての企業には企業文化が育っていません。存続する価値のある会社かどうかは、その企業の持つ企業文化が価値のあるものかで決まると思うのです。

よって、創業した会社の代表者としての私の一番の責務は、企業としての練度を高め、良い企業文化を育むことにあると考えています。

「企業文化を育む」とは何か?それは企業の進むべき方向を示し、対外的にはブランディングを行い、社内的には進むべき方向性と一致する「制度」と「福利厚生」と「雰囲気」を作ることであると考えます。

こういった「企業文化を育む」活動が、ITでいうシステムやソリューションの設計に該当すると思うのです。自分たちで実践できなければ、お客様へ提案できるわけがありません。

あと、しっかり経営していくってのは言わずもがなです。

まとめ

うーん。長々と書いたクセにうまく説明出来ていない気がするので、少し補足を。
経営とは、学問であり、正しい経営をする事は理詰めの領域であり、突き詰めれば一つの理想に行きつくと思うのです。
それなのに様々な企業が存在する理由が企業文化だと思ったわけです。

・企業は「企業の社会的責任」を果たさなければならない
・全てのステークホルダーに対して公平でなければならない
・創業した会社の代表として企業文化を育む必要がある
・代表者として会社の練度を上げることが必要である
・経営は言わずもがな

企業文化については、今後の記事でもうちょっと踏み込みたいと思います。

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