IT企業と名乗れるか 第9回 ~スペシャリストとゼネラリストと集合知~

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「スペシャリスト」「ゼネラリスト」という言葉があります。

スペシャリストとは、特定分野の専門家をさします。例えばプログラミングに秀でた人であったり、デザインに秀でた人であったり、プレゼンテーションに秀でた人であったりです。

ゼネラリストとは、広範囲にわたる知識を持つ人のことです。プログラミングでもデザインでもプレゼンテーションでもそつなくこなす人です。

どちらが良いのでしょうか。

私の答えは「どっちも良い」です。

スペシャリストは高度な仕事を行う事ができます。しかし、スペシャリストは仕事にスキルがマッチするかどうかで生き方に雲泥の差が生まれます。また、その才能にマッチした仕事が無い場合は能力を持て余すことになります。

日本においては、スペシャリスト型のエンジニアは組織に評価されない事が多々あり、損をしている事も多いような気がします。また、スペシャリスト型の人同士では実力差が明確になるため、相対評価の世界で比較され続ける運命にあります。

ゼネラリストは様々な仕事を行うことができます。様々な仕事が要求するスキルセットにマッチする可能性が高くなるため、仕事探しでも有利でしょう。

おそらく、日本においてはゼネラリスト型の人間の方が重宝されているのではないでしょうか。ただ、ゼネラリスト型の人間ではどうしてもこなせないような高度な知識を求められる仕事においては、スペシャリストの助けを借りる必要があります。

スペシャリストとゼネラリスト。要は、どちらも良いところと悪いところがあり、どちらか一方では世の中はうまくいかないという事です。

企業とはどうあるべきか。私はゼネラリストであるべきだと考えます。企業がゼネラリストであるとはどういう事かというと、何かに特化しないという事です。まず、企業として何かに特化するとマーケットの変化に弱くなります。変化の激しい時代です。IT業界は他の業界と比べても変化のスピードが早い業界だと思います。その業界を生きていくためには、ある程度の「幅」が必要だと思うのです。
(すこし話がズレますが敢えてもう一つ言うと、企業とは採用した従業員を定年まで雇う前提の事業計画を立ないといけないと思うのです。ねずみ講のように従業員を雇い続けないと成り立たなかったり、歳を取って管理職になれなかった場合に会社を辞めざるを得ない制度になっていてはいけません)

では、企業の従業員とはどうあるべきか。企業がゼネラリストであるべきなら、個人もゼネラリストであるべきかというと、その必要は無いと考えます。得意な分野があり、それが好きな社員がいればとことん伸ばしてスペシャリストとして活躍してもらえばいい。ゼネラリスト型の人間は、仕事で必要な知識や興味のある分野を学び、ゼネラリストとしての特性を伸ばしていけばいい。そして、様々な分野のスペシャリストとゼネラリストが集まった時に、理想的なゼネラリストとしての企業の姿を描けるのだと考えています。

そして代表者としての役割は、スペシャリスト型の従業員を正しく評価できる制度を作り、皆が得意分野や興味のある分野の能力を伸ばせる環境と活躍できる仕事を創造する事にあると考えています。

さらにスペシャリストとゼネラリストの対比をIT業界に当てはめた場合、企業はゼネラリストでなければならない理由があると私は考えます。

例えば、IT企業として特定の開発言語に特化した会社である事を自称したとします。それで最適なアプリケーションやシステムの開発が出来るでしょうか。

例として、Webサービスを作成する場合を考えます。シンプルなものであれば、PHPかRuby on Railsで作るのが良いかと思います(複雑なものには向いていないという意味ではないですよ)。では、その技術だけ知っていればいいかというと、答えはNoです。

少なくとも、プライバシーとセキュリティの知識は必須です。案外、これらは軽視されている事が多い気がしています。

もうひとつは、デザインです。そのWebサービスを使用する際の満足度はデザインが左右する割合が大きいと私は考えます(ここで言うデザインとは、見た目と使い勝手とインタラクションを指します)。例えば自動車を考えた場合、製品としての性能の評価だけではなく、デザインも購入する際の大きな判断材料になっています。他の製品を考えた場合も、人間が直接見たり触れたりするものについては、当たり前のようにデザインが考慮されていると思います。最近、ユーザーエクスペリエンス(UX)という言葉がありますが、使っていて気持ちが良いもの、感性に訴えかけてこそ、良いモノと言えるのではないでしょうか。現在のIT業界においては、デザインが軽視される傾向にあると感じています。また、デザイナーとエンジニアのいい関係が築けていないとも感じています。

Webサービスひとつとってもプログラミングだけでなく、プライバシー、セキュリティ、デザインなど、様々な能力が必要であると言えます(詳しくは書きませんが、障害に強い事や拡張性やスケールアウトする事も非常に重要ですし、他にもさまざまな評価軸があります)。

つまり、IT企業とは宿命的にゼネラリストでなければいけないと思うのです。

ただ、何の計画もなしに幅広く事業を行う訳にはいきません。高度なバランスで程よい「幅」を持っているのが良いIT企業であると考えます。個々の能力では出来ない事が企業という集団だからこそ出来る、そういった集合知を築いていきたいと考えています。

追伸:
つまり、個々の従業員としては不得意分野があっても良いわけです。興味のある分野、得意な分野を伸ばしていき、不得意分野は相互に補完していければ良いのですから。

追伸2:
私は個人的に「知識のストッキング理論」を提唱しています。ストッキングは一か所を引っ張ると周りもつられて伸びます。特定分野の知識を得ようと学ぶと、おのずと関連する周辺知識も身に付くという事です。不得意分野の解消方法も、得意分野を学習する事が近道だったりするのではないでしょうか。またこれは組織にも当てはまり、学べる雰囲気にあり誰かが学べば、周りにもそれが波及します。

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