IT企業と名乗れるか 第5回 ~IT業界と日本の産業の現状は?~

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いきなりですが、これからいくつか記事を一部を引用して紹介したいと思います。
(記事の内容に興味を持った方は是非原文の方をご参照ください。)

まずはこの記事から。
SI亡国論(1)- 日本にも世界にも全く貢献できないIT業界

ソフトウエア開発を請け負う“純粋な”SIerや受託ソフトウエア開発会社はもとより、コンピュータメーカーも含め日本のITベンダーは、世界に対してほとんど価値を提供できていない。「日本のITベンダーだってグローバル展開を始めている」と反発する人もいるかと思うが、それは単に世界で商売しようとしているだけの話

日本のIT業界は世界に貢献していない。というか、IT産業ですらない。「日本にはIT産業が無い。IT利用産業があるだけだ」と大手ISPの経営者が話していたが、まさにそれが日本のIT業界の姿である(関連記事:日本にはIT産業は無くIT利用産業も無い

日本のITベンダーは日本や日本企業に貢献できていない。「何を言う!」と怒るであろう業界関係者に聞くが、日本のユーザー企業がIT活用で欧米企業に差を開けられつつあるのはなぜなのか。日本ではメーカーといえどもSIが主たるビジネスだが、それは価値をほとんど生まない御用聞き。しかも、その低付加価値の牢獄に大量の技術者を閉じ込めている。

IT活用の優劣が企業の成長や国力の差となる。そうした中、「後追い」「御用聞き」「労働集約」を特徴とする、およそ「ハイテク産業」とはかけ離れた日本のIT業界は、日本企業や日本全体に貢献するどころか、足を引っ張っている。

かなり手厳しいです。

次にこの記事。

「人月」に頼るIT部門の勘違い

多くのITベンダーが「このままでよいのか」と疑問を感じつつも、長く続けてきた商慣行がいくつかある。その代表例は、SIにおいて人月(1人の技術者が1カ月に行う作業量)単位で見積もった工数をベースに、料金を算出する“人月商売”だろう。

この人月商売は、ITベンダーにとってはある意味、楽な商売である。労働集約型産業の典型であるSIビジネスでは(略)ITベンダーからすると積み上げた原価に儲け分を上乗せした金額である。受注しさえすれば自動的に儲かるわけだ。

ITベンダーがSIにおいて単なる“労働力提供”ではなく、何らかの価値を提供しようとする際、この人月が大きな障害となるのだ。

両方とも日経コンピュータの木村 岳史さんという方の記事のようです。
すべてに賛同する訳ではありませんが、問題提起として価値のあるものだと思います。

次の記事は見出しだけ引用させていただきます。

ITエンジニアの地位を落とす、日本企業の大きな誤解

・利益率の低い日本のソフトウエア業界
・人貸しサービスなので多重構造化が避けられない
・SIer中心では技術者が育たない
・エンドユーザーに向き合わないと技術が評価されない
・製造業からサービス業への変化が起きている
・実は世界的にも優秀な日本のプログラミングスキル

今までの記事を見ると、日本のIT業界の現状はあまり良くない印象です。

では、海外はどうなのかというと、こんな事がよく言われています。
アメリカにはSIerなんて存在しない
…タイトルだけで分かりますよね。リンク先の記事もよくまとまっています。

ただ、アメリカにSIerが本当に存在しないのかというと、次のような記事もあります。
日本のIT業界を「SIガラパゴス」と言う前に知っておきたい海外ベンダ事情
各国様々であり、「日本だけが特殊」という訳ではない、という趣旨の記事です。

米国IT業界に過去あった多重下請構造、それが破壊された理由
昔はアメリカも日本と同じような状況だったようだけど、今はほとんどなくなっているようだ。理由はオフショアと思われるが、正確にはわからない、といった趣旨です。

色々と調査しても、海外の状況は分かるようで分からないです。

良く分からない状況ですが、次の話は私も共感するところがあります。
日本のIT企業のアカデミアにおける存在感の話
コンピュータサイエンスの世界で日本のIT企業の存在感が無いという話です。これは上で紹介した『SI亡国論(1)- 日本にも世界にも全く貢献できないIT業界』と同類の話かも知れません。

とまあ、様々な問題がありそうなIT業界ですが、ここでどうあるべきかを論ずるのは今回は止めておきます。少なくとも現状が最適だとは思っていませんが、他人事のように語るつもりもありません(私もこの業界の一員として今までやってきたのですから)。

ミクロの視点だけで物事を考えると本質を見誤る事があります。視点をマクロにして日本全体の様々な産業について考えてみると、IT業界だけに問題があるという訳でもなさそうです。

例えば記憶に新しいものとして、福島原発で作業されている方の給料の問題がニュースになっていました。
危険手当ゼロ(フクシマ原発)原発作業員の「ピンハネ給料明細」
福島原発事故収拾を任された英雄たちの真実、7次・8次下請け労働者もザラ
3割が偽装請負の疑い 第1原発の作業員
日当9000円――なぜ原発で働く人の賃金は安いのか (1/4)

他にも、日本の製造業を陰で支える町工場も良くない状況であるとニュースになっていました。
円安で大儲けの自動車メーカー、その恩恵が全くない部品メーカー

実際のところは当事者に聞いて分析してみないとわかりません。ただ、日本の製造業の現状が最適ではない、という事は言えそうです。

また、こんなこともよく言われます。
「日本人の生産性」は先進国で19年連続最下位 非効率なホワイトカラーの働き方はどう変わるべきか
改善すべきは「労働生産性が低い」日本人の働き方
実はモチベーションと生産性が低い日本人――理由はこれだ

これらの状況は、製造に携わるエンジニアと雇用されている企業、その企業のお客様といったステークホルダー全員にとって良い状況ではないでしょう。

こういった状況について、少なくとも次のような事が言えるのではないかと考えています。
 ・日本の様々な業界において、従業員がより良く生きられる環境が必要
 ・企業は仕事のやり方において、もっと改善できる要素がある
 ・企業と従業員の関係についても、違った価値観の登場が求められている

ITとは今をより良くするための技術だと思うのです。IT業界が問題を抱えているようでは他の業界の方に対して説得力が無いですし、ITの力があればこういった問題も解決できると思うのです。かといって、今まで築き上げてきた構造が容易に変わる訳はありません。そもそも改善を重ねた結果、今があるというのも事実です。歴史には敬意を払う必要があると考えます。問題解決の方法は押し売りであってはいけません。問題意識を共有して、共に解決していく事が一番大切だと考えます。

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