【物理の小話シリーズ】第1回:ウソ、大げさ、まぎらわしい電気の話

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記事のタイトルに「物理の小話シリーズ」と書きましたが、この名の通り、これからいろいろな題材を使って物理に関する様々な話題を提供したいと思っています。ミクロ(原子よりに細かい世界)からマクロ(宇宙規模の世界)の世界まで誰にでもわかるような記事を書きたいと思っています。ただ、ちゃんと書こうと構想を練っているうちにどんどん時が過ぎてしまうし、時間をかければうまくまとまるわけでもないので、題材が見つかるたびに、それを切り口に少しずつ書いて行こうと思います。

第1回は、「ウソ、大げさ、まぎらわしい電気の話」です。

現代に生きるみなさんの生活になくてはならないもの「電気」。ここでいう「電気」は照明の事ではなく、電線の中を流れるアレのことです。身近にある電気で動くものには照明、電気湯沸かし器、エアコン、掃除機、洗濯機、テレビ、パソコン、携帯電話などなど、数え上げればキリがありません。そんな身近に存在する電気ですが、その原理を正確に理解し、説明できる自信のある人はいますか?

電気の分野について、様々な説明がされていますが、どうも分かったようで分からない、どれだけ調べてもスッキリしない人もいるのではないでしょうか。もしくは、分かったつもりになっていても、実は間違って解釈している人も多いのではないかと思います。

電気は目に見えないものです。それを説明するために、色々な図が登場しますが、それはあくまでも例え話のため、勘違いを起こす原因にもなります。また実は電気の世界には未だに解明されていない事が残っています。それなのに、教科書などでは既に分かっている風に書かれていたりもします。それらについて、代表的な2つを紹介したいと思います。

まぎらわしい「電流」と「電子」

電圧と電流を説明する図として、次のようなものが登場します。
電圧と電流
また、次のような事も知っている人が多いのではないでしょうか。

  • 電気は光のスピードで伝わる
  • 電気は電子の流れ

これらをもとに、次のように考えている人はいませんか?

  • 電線の中を電子が光のスピードで進んでいる

もしこう思っていたら、それは間違いです。事実は次の通りです。

  • 電子は電線の中をものすごくゆっくり移動する
  • 電子が流れ始める現象は、電源のマイナス側からプラス側へ向かって順次始まる
  • マイナスからプラスへ向かった順次始まっていく現象は、ほぼ光の速度で伝わる

どうでしょう?知っていましたか?意外に思った人もいるのではないでしょうか。例えば電子はゆっくり移動すると書きましたが、どれくらいゆっくりかというと、1㎜径の電線に1Aの電流が流れる場合の電子の速度は1秒間に0.1mm位しか進まないのです。
突然ですが、電気はどこから来るか知っていますか?最近では自宅の屋根にある太陽光発電という場合もありますが、基本的には何百キロも離れた発電所から送られてきます。なんとなく、電子が発電所から流れてくるように考えていませんか?仮に発電所からの距離を100kmとすると、先ほどの電子のスピードから計算すると発電所から家まで約32年かかる計算です。でも実際には、発電所から送られた電気信号は電線に沿ってほぼ光の速さで伝わって、あなたの近くにある電線の中の電子をちょっと動かすのです。じゃあ、32年待ったら発電所の電子が家まで来るのかというと、それも違います。ご存知の方も多いかと思いますが、発電所からの電気は交流電源です。これは、プラスとマイナスが交互に切り替わります。プラスとマイナスが交互に切り替わる結果、あなたの近くにある電線の中の電子は「右往左往」します。つまり、その場でプルプルしているだけで移動しません。
コンセントからの電線

電気製品が動作するのは電流があるからです。電流の正体は電子のとてもゆっくりとした移動です。では、その電子を動かす指令を光の速さで伝えるものは何でしょう。それは「電界」と「磁界」です。電界、磁界の説明はまた別の機会に譲るとして、電界と磁界をつくり出すものについて、少しだけ触れておきます。電界と磁界をつくり出すものの正体は「原子」の中にある「荷電粒子」です。荷電粒子とは「電子」と「陽子」です。・・・おっと、分かりやすいをモットーにしたいので、専門用語を並び立てるのはこれくらいにして、みなさんが良く知っている原子の構造についての「ウソ」をお伝えします。

ウソがまかり通っている「原子」の構造

原子について、次のような認識ではありませんか?

  1. 分子は原子からできている
  2. 原子の外側では「電子」が回っている
  3. 原子の中心には「陽子」と「中性子」がある
  4. 原子は電子と陽子と中性子からできていて、それ以上細かく分離できない

原子の構造

この図を「原子の構造」と言い切ってしまうと、ウソになります。たぶん「原子の概念図」とでも呼べば許容できるでしょうが、色々と端折っている部分があり、正確ではありません。上の箇条書きで言うと、正しいと言えるのは「1.分子は原子からできている」だけです。では、どう表現するのが正しいのでしょうか。それを説明するには時間と気合が必要なのでまたの機会とさせていただきたいのですが、少しだけ答えを言っておくと、「正確な構造を図示するのは難しく、実はまだ解明されていない事も多い」です。実は、電流を理解する上で重要となる「電界」「磁界」についても、現在の科学では完全には解明されていないというのが本当のところです。

次は「電界」「磁界」と、それからの相互作用から発生する「電磁波」について書きたいと思います。

余談:物理学の教え方についての私の考え
学校で理系の授業をギブアップしてしまう人もけっこういると思うのですが、教える側が「わかっていること」と「わかっていないこと」を明確にしなかったり、「計算ができる」というのと「原理が解明されている」というものをごっちゃにしてしまっている事が、授業についていけない原因の一つになっていると思うのです。例えば、図が出てくると日常体験と照らし合わせてしまうと思うため、電流の流れを水の流れに例えると電流と電子の流れと混同したり、原子核の周りを電子がクルクル回ってる図で表現すると、なんで吹っ飛んだり潰れたりしないのかとか、クルクル回ったら化学で習う結合の手はどう説明するのか、とか色々と勘違いなどの弊害があると思うのです。概念図で説明する際やいきなり数式を出して説明する場合は、細心の注意が必要なんじゃないでしょうか。

注意:このシリーズは物理学を専攻したわけではない、ただの物理好きが書いています。もし誤りがあればご指摘いただけると幸いです。

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