遠隔操作ウィルス誤認逮捕にまつわる怖い話(2)

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前回は、遠隔操作ウィルス誤認逮捕事件を題材に、誤認逮捕のちょっと怖い話をしました。まあこの手の話はよく言われることで、何を今更という人も多いでしょう。今回は、誤認逮捕された時の取調における「もっと怖い話」をしたいと思います。

警察の取調における、もっと怖い話

今回の誤認逮捕事件において、取調官は被疑者から見事、犯行を行ったという自白を勝ち取りました。・・・いやいやちょっと待て、実際は無実なんだからその言い方はおかしい、と思われるかもしれません。

警察の中の人になった気分でちょっと考えてみましょう。警察と言っても一人の人間がすべての仕事を行っているわけではありません。事件の捜査を行う人と取調を行う人はそれぞれ専門の人が担当するはずです。捜査を行った人が取調を行う人にこう言ったとします。「あいつは必ず犯人だ。証拠もこれだけ挙がっている」。すると取調を行う人は、犯行の動機や犯行当日の行動など事件の「あらすじ」を考えます。そして被疑者に問います、「お前はこういったあらすじで事件を起こしたに違いない」。被疑者にもいろいろな人がいるでしょう。犯行を認める人、あらすじを訂正する人、身に覚えがない事を訴える人。無実を訴えた場合、取調官は捜査官と被疑者のどちらを信じるかを考えます。そのとき、事件によっては捜査官から「あいつで間違いない」と言われていることもあるでしょう。その場合、取調官は被疑者にこういうかもしれません。「証拠は挙がっている。あがいても無駄だ。早く認めた方が早く日常生活に戻れる」と。このやり取りの中には、取調官の悪意は微塵もないかも知れません。被疑者が日常生活に早く戻れるようにと善意で言っている可能性すらあります。

方や被疑者の気持ちになって考えます。あなたは無実の被疑者です。なぜか自信満々に取調官に問い詰められます。認めれば早く帰れるといわれます。この時点で犯行を認めてしまう人もいるでしょう。しかしあなたは認めません。取調は続きます・・・。

取調官は言います。「お前は○月○日にXXXへ行っただろう」「いえ、行っていません」「監視カメラに映っているぞ」「(・・・ほんとだ映っている)そういえば行ったかもしれません」「お前は○○のことを恨んでいたのではないか」「そんなことはないです」「お前の友人AもBもお前が○○を恨んでいたと言っているぞ」「(うーん、言った事もあるかもな)」次第に記憶に自信がなくなります。「お前は○○の掲示板を読んでいたな」「(読んでいた気もする)」「お前は世間を混乱させたいと思っていた」「(思ったこともあるな)」「お前が犯行声明を投稿した記録がある」「(じゃあ書いたのかも)」「お前は何でこんなことをしたんだ」「(たしか理由だったような気がする)」。という風に、実際に行っていない犯行の記憶がよみがえり、自白を行ってしまいました。取調官はこう思うかもしれません。「また自分のあらすじが正しかった。次も悪を裁くため、正義のため、罪の意識に苦しむ被害者のために今後も自白を引き出すぞ」。

・・・いやいや、こんなことはありえない。やってもいないことをやったと思う訳がない。そう思うかもしれません。しかし、実際あり得る話なのです。記憶というのは不正確なもので、実際やってもいないことをやったように記憶が書き換えられてしまうことがあるのです。記憶というのはボイスレコーダーやビデオカメラのように正確なものではなく、人間の気分のように曖昧なものなのです。

信じられないという方は、ぜひこの本を読んでみてください。


あなたの記憶の何割が、本当の体験に基づいているのでしょうか?ほとんどが脳が勝手に作り出した「嘘の記憶」だったとしたら・・・。

今回の誤認逮捕事件では自白の強要があったのではないかと問題視されています。実際そうだったのかもしれません。しかし、前述のストーリもあり得ない話ではありません。現在、日本では自白に頼った取調や裁判がたくさん行われています。これを「自白偏重」と呼ぶそうです。また自白は「証拠の王様」とも呼ばれているそうです。そこでよく問題になるのが「自白の強要」ですが、前に述べたとおり「記憶は嘘をつく」という問題についても真剣に考える必要があります。警察には、取調の際に自白の強要を行っていないか、実際の経験に基づいた供述を行っているかについて検証し、証拠に基づく正しい捜査を行っていただきたいと思います。

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