2023年10月3日(火)~ 2024年1月28日(日)
東京・上野の国立西洋美術館でキュビスム展が開催中です。
最近、山田五郎さんのYouTubeチャンネル「山田五郎 オトナの教養講座」にハマっています。
その中で紹介されて知ったキュビスム展に行ってきました。
こちらのチャンネルは現代美術を中心に、作品に使われている技法・作者の人生・その当時の歴史的背景などを分かりやすく面白く解説してくれています。
リンクはキュビスム展の回ですが、個人的には特にアンリ・ルソーの回がお気に入りです。
さて、上野公園は中学校の修学旅行以来なのでおよそ20年ぶりです。
JR上野駅 公園口を出てすぐ右手、国立西洋美術館前ではロダンの「考える人」や「地獄の門」が変わらず迎えてくれました。
そして、相変わらず修学旅行生が沢山居ました。
キュビスム(仏: Cubisme; 英: Cubism)とは
フランスで生まれた言葉なので、元はフランス語です。
直訳するとcube+ismで立方体主義みたいな感じです。
なんのこっちゃ?って感じですが、ざっくりと「対象物を立方体の様な単純で幾何学的な形に分解したり極端に抽象化した表現技法と、その美術運動」を指します。
私のような教養のない日本人からすると、画家と作品とタイトルがパッと思い浮かんで一致するのは
- レオナルド・ダ・ヴィンチ「モナ・リザ」
- ゴッホ「ひまわり」
- ピカソ「ゲルニカ」
と、いったところじゃないでしょうか。
「モナ・リザ」や「ひまわり」は、対象物もハッキリしているし、芸術的価値が高いというのも、なんとなく分かります。
しかし、ピカソの作品はどうでしょう?ぶっちゃけ、上手いのか下手なのかも判断ができません。
その「よく分からない画風」の根底にあるものが、表現技法としてのキュビスムじゃないかと思います。
また、美術運動としての側面では、おおよそ1907年頃から約10年余り、名だたる画家達が一度は試すほどの大ブームだったそうです。現在では、当時の画家の「はしか」とも呼ばれています。
そのブームは絵画だけでなく、建築様式や映像表現にまで伝播し、今日までの全世界の現代美術に影響を与えていると言っても過言ではありません。
上の画像はイラストレーターWALNUTさんのキュビスム展のイメージボードです。
キュビスムの技法的解釈は、こういう画風のもの。と思って差し支えないと思います。
キュビスム展の凄いところ
フランス パリは芸術の都と呼ばれるくらい芸術の中心地であることはご承知の通りです。大昔から沢山の芸術家が、パリを拠点として活動したそうです。
現在でもルーヴル美術館などが有名ですね。
今回のキュビスム展は、そのパリにあるポンピドゥーセンターというヨーロッパ最大の美術館から大量に作品が貸し出されて開催されます。
日本でのこの規模のキュビスム展は50年ぶりだそうです。これを逃すと観る機会がないかもしれません。パリに行っても良いですが、物価高や円安の影響もあり飛行機代だけで往復20万円とか掛かります。
さらに、24年のパリ五輪後にポンピドゥーセンターは大改修が予定されており、暫くはこれらの作品を観るのも難しそうです。今しかチャンスはありません。
そのうえで、もっと具体的にどう凄いのかの解説は以下の動画を見ていただきたいです。
森山未來さんMCの番組で、ゲストには国立西洋美術館館長の田中正之さんが非常に分かりやすく解説されています。
巡回展示
実はこの展覧会は、巡回展示もあります。
京都市京セラ美術館 2024年3月20日(水・祝)~ 7月7日(日)
大阪在住の身としては京都の方が近くて移動が楽ではありますが、私はどうしても東京での展示に行きたかったのです。ここまでに紹介した動画の中でも語られていますが、国立西洋美術館そのものが、キュビスムの影響を受けた作家ル・コルビュジエによる設計だからです。
可能であれば、国立西洋美術館へ行って観てほしいところです。
雑感
中学校の美術の授業で、教科書にある絵画の中から好きなものを選んで模写するというものがありました。そこで題材を選ぶ時に私が候補にしたものに、モーリス・ユトリロ「ドゥイユの教会」とジョルジュ・ブラック「レスタックの家」がありました。
「ドゥイユの教会」は画用紙に縮尺を合わせると一部カットせざるを得ないこと、そもそも絵自体が白色ベースで写すのが難しいこともあり、結局は「レスタックの家」を選択しました。結局時間が足りず、途中まで色を塗ったところで授業は終わってしまいましたが、この2枚は非常に好きだったので覚えています。
もちろん、当時はキュビスムなんて意識していません。(教科書には絶対その説明があったと思いますが・・・)
少なくとも、私の記憶には深く残っている作品でした。
それから二十数年後、まさにキュビスムの原点となる「レスタックの家」ではありませんが、同時期にブラックが描いた絵を直接見ることが出来ました。どこか感慨深いものがありました。
ブラックやピカソが敬愛したセザンヌやアフリカの呪物から始まり、二人をはじめとした何人もの実験的作品を経て、個人的にキュビスムの完成形と思えるアルベール・グレーズ「収穫物の脱穀」や、超大作のドローネー「パリ市」に至る流れは圧巻でした。
また、所々で当時の民衆がキュビスムをどのように捉えていたのかについても説明があり、これも非常に興味深いものでした。
やはり当時の人もピカソやブラックの実験の時期の作品については「変」だと思う一方で、キュビスムが成熟してきた頃にはモダンでオシャレな感じがする。という感覚もあったようです。
例えば、ミハイル・ラリオーノフ「散歩:大通りのヴィーナス」やシャガール「ロシアとロバとその他のものに」辺りは、現代人の私が見ても、直感的に「なんかイイな」と思えます。
ここまで順にキュビスムの歴史と作品の変遷を追体験した上で、ル・コルビュジエ「静物」を観ることで、そもそもピカソやブラックが、キュビスムでどういったものを表現しようと実験していたのか?が、スッキリと理解出来る気がしてきます。彼が設計した国立西洋美術館が美しく、世界文化遺産に登録されているのも頷けます。
いやぁ、東京まで行ってよかった。
最後に
この展示を見た日の夜だったと思うのですが、SNSで「美術館の楽しみ方」みたいなものが話題になっていました。
確か「どれでも一つ持って帰れるとしたら、何が良いか?」「自分が怪盗になったつもりで、どれか一つを盗むとしたらどれを盗みたいか?」みたいなものです。なるほどなぁと思います。
そういった観点で思い返すと、シャガール「ロシアとロバとその他のものに」かドローネー「パリ市」が欲しいです。モダンで大きな部屋にこれらを飾ると中々カッコイイと思います。
ピカソやブラックの初期の絵は、、、要らないですw
そんな感じで、普段美術に興味が無い人でも、とても楽しめる展覧会だと思います。
入館料は2,200円と格安です。ぜひ。